視機能:弱視について

(2008年11月1日)

1 視機能の発達

生まれたばかりの赤ちゃんは、0.01くらいの視力しかありません。生後3ヶ月になると0.1、6ヶ月で0.2くらいの視力になると考えられています。3歳までに視力は急速に発達し、3歳で0.6~0.9、5歳では1.0以上となり視力は成熟します。だから、三歳児健診で視力がきちんと発達しているかどうかをチェックして、異常を発見することはとっても大切なことです。視力は生まれた時にはまだまだ未熟ですが、「くっきりと見る」ということによって発達していくのです。また、私たちの目は2つあり、両目で物を立体的に見ています。片目だけで見ると遠近感が悪くなりますね。このように両目で物を見る機能を両眼視機能といいます。この両眼視機能も視力と同じように、生まれてから「物を両目で同時に見る」ということで発達していくのです。もっと詳しくというと両眼視機能は視力の発達よりも早期に発達しています。遅くても2歳までに両目で同時に物を見る機会がなかった場合、両眼視機能は得られてないといわれています。

2 弱視って?

視力の発達する期間(生後すぐ~5・6歳)に、眼の病気・異常けがなどがあり、「物をくっきりと見る」ことが妨げられると視力の発達は遅れてしまいます。これを「弱視」といいます。
こどもの眼の異常は早期発見が大切
残念ながら先天的な眼科疾患の中にはどんな早期に発見・治療しても治らない重篤なものもあります。しかし、早期(生後3ヶ月以内)に発見し治療すればかなり良い治療結果が期待できるものも多いです。次のような心当たりがある場合は三歳児健診を待たずに早く眼科受診しましょう。
・ 目の大きさ、形がおかしい・目がゆれる・瞳が白くみえる・目つきがおかしい・まぶしがる・いつも目やに、涙が出る

3 弱視の原因は?

弱視の原因は次のように分類されています。

1) 斜視弱視
片方の目の視線がずれている状態(斜視)ではその目は物を見ていない状態になり、視力が発達しません。生後6ヶ月未満で発症する乳児内斜視という疾患がありますが、もし早く発見して治療しなかったら斜視弱視になってしまって、おとなになってからでは視力を出すことができません。私たちも残念ながら発見が遅く治療できなくなってしまった乳児内斜視の患者さんを診察したことがあります。弱視になってしまった目の視力は、眼鏡で矯正しても0.1とか0.2しか出ないことが多いです。

2) 不同視弱視
片方の目に強い遠視や乱視があると、その目はぼんやりとした(ピンぼけの)物しか見ることができません。これを不同視といいます。この目はくっきりとした物を見る機会がないので視力の発達は途中までで止まってしまいます。

3) 屈折性弱視
両方に目に強い遠視や乱視があると、いつもぼんやりとしたものしか見ることができず視力の発達が止まってしまいます。

4) 形態覚遮断弱視
まぶたがいつも下がっていて黒目(瞳孔)をおおっている目瞼下垂や眼帯で目をおおっていた場合、その目には光がはいりません。その目は物を見ることができず、視力が発達しません。また、先天白内障といって生まれた時から白内障があって水晶体が濁っていると、目の中に光が十分入りません。早く発見して手術しないと、とり返しのつかないことになってしまいます。

4 弱視の早期発見は?

弱視の目は生まれてからずっと物をみていないか、あるいはピンぼけの状態で過ごしています。両目が弱視の場合は、テレビや絵本をとても近づいて見たり、目を細めたりすることがあったりすることがあります。片目の弱視の場合は、良いほうの目を隠すととても嫌がったりすることがあります。しかし、症状が何もなくまったく気づかない場合も多いのです。目つきがおかしい(斜視)など、保護者の方々が見てもわかるものは多くありません。そこで、三歳児健診の価値があるのです。三歳児健診での視力検査で低い値が出ても、保護者の方々は普段全然症状がないから、きっとうまく答えられなかっただけだろうと思っていることがありますが、それは大きな間違いです。普段から症状があるのなら、わざわざ視力検査をしなくても発見できるのですが、残念ながら無症状である場合がほとんどなのです。三歳児健診はとっても大切な健診です。

5 弱視の治療は?

弱視の治療で重要なことは早く発見して早期治療を行うことです。視力の発達期間を過ぎてから治療を始めても、治すことができません。弱視の治療は原因になっている疾患によって違います。斜視が原因なら良いほうの目を眼帯(アイパッチ)で隠して悪いほうの目だけを使う時間を作ります。悪いほうの目の視力が発達してから斜視の手術を行うことが多いです。斜視の種類によっては先に手術するものもあります。まず、遠視の眼鏡をかけてから手術する斜視もあります。遠視や乱視などが原因の片目だけの弱視の場合は、眼鏡をかけてピントをあわせてくっきりと物が見えるようしした上で、良いほうの目をこの図のように眼帯(アイパッチ)で隠します。遠視や乱視が原因になっている両目の弱視の場合は、眼鏡をかけて物を「くっきり見る」ことによって視力を発達させます。この眼鏡は常にかけておくことが大切です。本を読む時だけとか授業中だけかけても、弱視の治療としては不十分で効果があまり得られません。眼瞼下垂、先天白内障が原因のものは、まずその手術をします。
ここで、三歳児健診について保護者の方々からのよくある質問をあげてみましょう。

Q1うちの子は目がいいと思うのですが、三歳児健診で視力検査が必要ですか?

A1三歳児健診で弱視が発見された子の多くは普段の生活では何も症状がなく、家族は目が悪いなんと思っていなかったことが多いのです。私たちおとなは新聞の字を読んだり車を運転したりすますので、少しでも見にくいと「おかしいな」と自覚します。でも、乳幼児は言葉で「見えない」といいません。両目ともとても視力が悪い子は、テレビをくっつくようにして見るなどしぐさで保護者が気づくことがありますが、片目だけの弱視の子は、まず気づくことはありません。視力検査をして初めてわかるものなのです。また乳幼児は0.2程の視力があれば日常生活は不自由なく送ることができます。三歳児健診で弱視が見つかった子の保護者が「小さな虫や遠くの飛行機を誰よりも先にみつけるのに」と驚かれることがよくあります。しかし、弱視であれば早期治療しないとおとなになってからでは、もう手遅れで治療できないのです。

Q2弱視の子は多いですか?

A1弱視は1~2%といわれています。滋賀県(健診受診率88.6%)では治療が必要な弱視の子は1.4%でした。

Q3三歳児健診で弱視といわれ眼鏡をかけるようにいわれました。こんなに早くから眼鏡をかけなくてはならないのでしょうか?この子の姉も目が悪い(近視)のですが、眼鏡は小学4年生からでした。

A3この3歳の弱視の子が眼鏡をかけないで10歳になってから眼鏡をかけても、もう視力の発達期間が終わっていますから良い視力は出ません。手遅れになっていまいます。お姉ちゃんは後天性の近視で、もともと視力が発達した後から起こった近視なので眼鏡をかけたらよく見えているはずです。裸眼視力(眼鏡もコンタクトも使わずに自分の目だけで見た時の視力)が悪くても、矯正視力(眼鏡やコンタクトレンズでの視力)が1.0あるなら3歳から眼鏡をかける必要はありません。この3歳の子は治療が必要で眼鏡は薬のようなものです。この場合は眼鏡に費用は医療費控除の対象になります。しかし、お姉ちゃんの場合は治療が必要でなく、眼鏡は物を見るための補助道具です。

Q4三歳児健診で弱視といわれ眼鏡をかけるようにいわれました。いつまで眼鏡をかけなくてはならないのでしょうか?

A4弱視を治療しても、残念ながら裸眼視力が良くなるわけではありません。弱視の子はどんなに良い眼鏡やコンタクトレンズを使っても年齢相当の視力がないのです。弱視治療の目的は「矯正視力」で1.0を出すことだと考えてください。なお、子どもが成長するにしたがって遠視や乱視の程度が変化することはあります。弱視を克服して矯正視力1.0となった後に、幸運にも遠視や乱視に程度が変化した結果、裸眼視力で不自由なく生活でき、眼鏡が不要になる場合もありますが、弱視治療が終わった子が、みんな眼鏡をはずすことができるわけではありません。

Q5弱視治療のために眼鏡を常にかけています。毎日2時間良いほうの目に眼帯(アイパッチ)をして悪いほうの目だけで見る時間も作っています。家庭でできることは、ほかにないのでしょうか?

A5眼鏡をかけて細い物をしっかり見ることが弱視治療の基本です。目が悪いからといって、遠くの緑をぼんやり見ていても治療の効果は出ません。眼鏡でピントを合わせてテレビをしっかり見たり、細かいぬり絵やパズルをして目を使ってください。新聞の字さがしなども効果です。

<遠視・近視・乱視>
外から入ってきた光は角膜で屈折し水晶体でピントを合わし、網膜に像が結ばれます。その像は視神経から脳に伝えられます。しかし、網膜にピントの合った正しい像が結ばれない状態を「屈折異常」といいます。屈折異常には近視・遠視・乱視があります。近視は網膜の前で像が結ばれる状態で、遠視は網膜の後ろに像が結ばれます。乱視は角膜がラグビーボールのようになっていて縦と横のピントが合わない状態です。